【医師監修】妊娠前に受けておくベき婦人科以外の治療
妊娠前から持病がある人は妊娠・出産、産後の育児が可能かどうか、妊娠できる時期や妊娠時の注意点について主治医(専門医、産婦人科医の双方)とあらかじめよく相談する必要があります。
ここでは、代表的な病気への注意についてお伝えします。
心臓の病気
心疾患の程度によって、妊娠・出産が可能かどうか、専門的に判断されます。妊娠中は、例え健康な妊婦さんでも動悸や息切れがしやすくなります。特に妊娠後期には大きくなった子宮に心臓が圧迫され、血液の循環が悪くなるため、胎児に酸素や栄養が十分に行き渡らず早産や死産になりやすいというリスクがあります。出産は負担を避けるために無痛分娩でおこなわれ、鉗子分娩や吸引分娩になることが多いでしょう。
腎臓の障害
腎臓に障害がある場合、胎児に栄養と酸素が十分供給されにくくなるため、胎児の発達遅延、流産、早産、子宮内胎児死亡に結びつくことがあります。また、妊娠高血圧症候群になる確率も高くなります。妊娠中は塩分、タンパク質の摂り過ぎに注意し、低カロリーの食事に努めます。腎盂腎炎は抗生物質でしっかり治してから妊娠に臨みます。
糖尿病
妊娠前から糖尿病がある場合、羊水過多や早産、胎児死亡が起こりやすくなります。生まれた後には、赤ちゃんに低血糖や呼吸障害が見られることがあります。また、軽症の場合には巨大児になりやすく、重症の場合には未熟児になりやすい傾向があります。妊娠中は食事療法を徹底し、摂取カロリーをコントロールします。場合によっては入院管理も必要になります。
甲状腺の異常
甲状腺に異常があると流早産が起こりやすく、また妊娠高血圧症候群も起こりやすくなります。また、甲状腺機能亢進症の治療に使う抗甲状腺剤を多量に使用した場合、胎児の発育不全や胎児死亡が起こる可能性があります。そのため妊娠前から妊娠中は頻繁に甲状腺ホルモンを測定し、コントロールしていくことが大切です。
高血圧、低血圧
高血圧の持病がある妊婦は妊娠高血圧症候群になりやすく、早産や死産、低出生体重児の出産のリスクが高まります。降圧剤を使用して治療しますが、重症の場合には妊娠継続が難しい場合もあります。家庭でも定期的に血圧を測って、塩分、またカロリーを制限する必要があります。低血圧の場合はタンパク質や鉄分の摂取を心掛け、血圧の循環をよくするよう努めます。
アレルギー
妊娠中は体調が不安定なため、いつもよりアレルギーの症状が出やすくなる場合があります。そのため、なるべくその要因を排除するように努めましょう。親のアレルギー体質は子どもに遺伝しやすいですが、100%ではありません。食物アレルギーで明らかなアレルギー因子がわかっている場合には、妊娠中の摂取や調理方法に気を付けますが、栄養不足になる可能性もあるため医師の指導の元でコントロールする必要があります。
ぜんそく
妊娠中に発作が起きたときに、一般的なぜんそくの治療をおこなっても胎児に影響することはまずありません。ただし、ぜんそくが起こると体力を消耗しやすいので、風邪などをきっかけに発作が起こらないように気を付けます。また、精神的なストレスも誘因になりやすいためなるべく大らかな気持ちで過ごすようにしましょう。
椎間板ヘルニア
妊娠の後半になっておなかがせり出してくると、ヘルニアの症状が悪化しやすくなります。そのため、コルセットを用いたり痛みを感じたらすぐに横になったりして腰痛を防ぐことが大切です。それでも激痛が治まらない場合には、鎮痛剤内服や硬膜外ブロック注射を使用します。立ち仕事などで無理をしないこと、姿勢をまっすぐ保つように意識して予防に努めることが大切です。
てんかん
妊娠初期からてんかんの治療薬を服用していると、胎児の奇形を引き起こす可能性があります。そのため、妊娠前から主治医とよく相談して薬の使用をコントロールしていく必要があります。妊娠中はストレスによって発作を誘発しないよう、リラックスして過ごすようにします。また、出産は十分な管理の元でおこなえばまず問題ありません。
B型肝炎、C型肝炎
B型肝炎、C型肝炎は、胎盤を通じて、また出産時に産道を通じて赤ちゃんに感染しやすい感染症です。そのため、産後はすぐに赤ちゃんの血液検査を受け、また定期健診を受けながら感染予防の注射をしてフォローしていきます。
心の病気
最近増えているのが、心の病気を持つ女性の妊娠です。妊娠中は薬の量や種類が制限されるため、精神科の主治医とよく相談した上で妊娠できる時期を決める必要があります。また、ホルモンバランスの影響により妊娠中や産後、出産後も育児不安などによって精神状態が不安定になりやすくなります。 家族の協力を得てストレスをためない生活を心掛ける必要があります。