学資保険の配当金とは、保険会社が契約者から集めた保険料を運用し、予定より運用成績などが良かった場合に、その剰余利益の一部を契約者に還元するお金のことです。保険会社の運用や経営の結果に応じて支払われるもので、受取金額がいくらかは保証されていません。
- 祝い金:契約中に子どもの入学など所定のタイミングで受け取れるお祝い金。一種の生存給付金で、契約時に金額と受取時期が決まっています。
- 満期保険金:学資保険の満期に受け取れる一時金です。祝い金と同様に契約時に金額・時期が決まっており、契約どおり受け取れます。
- 配当金:上記2つとは異なり、保険会社の決算で剰余金が生じた場合に配分されるものです。保険会社の経営状況によっては配当金が支払われない場合もあります。
利源配当と利差配当
生命保険には保険料算出の前提となる以下3つの予定基礎率があります。
- 予定死亡率
- 予定利率
- 予定事業費率
実際の死亡率や運用利回り、経費率がそれぞれ予定よりも好転した場合に死差益・利差益・費差益という剰余金が発生します。この3利源すべての剰余金を契約者に配当するタイプの保険を「有配当保険」と呼び、かつての学資保険はこのタイプでした。一方で、剰余金のうち利差益のみを配当金として還元するタイプの保険を「利差配当付保険」といいます。学資保険では現在、後者の利差配当型が主流で、契約者配当は主に運用利回りの差益に応じて行われます。
通常配当と特別配当
配当金には、保険契約の継続中に定期的に支払われる通常配当と、契約が満期や死亡で終了するときに支払われる特別配当の2種類があります。一般に有配当の長期契約では毎年あるいは数年ごとに決算に基づく通常配当が割り当てられ、さらに満期受取や死亡時には消滅時特別配当として追加の配当金が支払われることがあります。通常配当は契約期間中の契約応当日などで受け取れるのに対し、特別配当は長期契約の満期や死亡時に一度だけ受け取れる点が異なります。
主な学資保険における配当金実績の比較
学資保険は商品によって「有配当」か「無配当」かが異なります。昨今の低金利もあり、配当金のない学資保険が増えていますが、一部の保険会社では今も利差配当付の学資保険を販売しています。その実績を、主な保険会社で比較してみましょう。また、配当金を付与しない代わりに保険料を割安にしたり返戻率を高く設定した商品も多く、各社で特徴が分かれます。
以下に、主な学資保険を提供する保険会社について、配当金の有無と配当の種類をまとめた比較表を示します。
保険会社(商品名) | 配当金の有無 | 配当の種類・頻度 | 備考・特徴(配当実績など) |
ゆうちょ銀行/かんぽ生命(学資保険) | 有り | – | 利差益配当型。決算で剰余が生じた場合に毎年度配当。 |
富国生命(みらいのつばさ) | 有り | 5年ごと利差配当付 | 利差益配当型。5年ごとに配当金を受取可能。相互会社であり、個人保険分野で12年連続増配の実績。 |
日本生命(ニッセイ学資保険) | 有り | 毎年配当(利差配当) | 利差益配当型。決算で剰余が生じた場合に毎年度配当。ただし業績次第で配当ゼロもあり。 |
ソニー生命(学資保険) | 無し | – | 無配当型。返戻率の高さが魅力。※例:学資保険(無配当)III型で返戻率約121.5%。 |
明治安田生命(つみたて学資) | 無し | – | 無配当型。保障より貯蓄性重視。契約者配当はなく、その分返戻率を最大127%程度まで向上。 |
第一生命(こども学資保険など) | 有り(一部) | 5年ごと利差配当付等 | 利差益配当型の商品あり。過去に「こども学資保険」など5年ごと配当付の商品を販売。現行の商品ラインアップでは学資保険を取り扱わない場合もあり。 |
アフラック(夢みるこどもの学資保険) | 無し | – | 無配当型。祝い金あり/なしや学資年金受取プランを選択可。配当金による上乗せは無し。 |
※同じ保険会社でも契約時期や商品タイプにより異なる場合があります。また無配当型の商品では配当金は発生しませんが、そのぶん「支払った保険料総額 < 受取総額」となる返戻率が高めに設定される傾向があります。例えばソニー生命の学資保険は無配当ですが高い返戻率を実現しています。
配当金あり学資保険の3つの特徴
配当金付きの学資保険には、以下のような特徴があります。
- 将来受け取れる学資金総額が増える可能性がある。
有配当の学資保険では、契約途中や満期時に配当金が支払われれば、その分だけ受取総額が上乗せされます。配当金によって手元に戻ってくる学資金が増えれば、教育費のさらなる強化につながる点が大きなメリットです。 - 保険料が割高になる。
配当金を将来支払う可能性がある分、無配当型に比べて契約時の保険料は割高に設定される傾向があります。予定利率などの基礎率を保守的に見積もる無配当型と異なり、有配当型では予定利率を高めに設定するため、その分保険料も高くなります。 - 配当金が出ないこともある。
配当金はあくまで保険会社の決算状況に左右されます。運用成績が振るわなかった場合などは十分な利差益が得られず、配当が全く支払われない可能性もあります。特に低金利が続く局面では「配当なし」となるケースもあるため、配当金は「あればラッキー」くらいの心積もりでいて、配当が無くても計画通り教育資金を準備できる返戻率かどうかで商品を選ぶことが大切です。
配当金の受取方法とそれぞれのメリット・デメリット
配当金の受け取り方には、主に次の4つの方法があります。契約する学資保険の商品によって利用できる方法が決まっていますが、それぞれ特徴が異なります。
- 積立配当 – 配当金をそのまま保険会社に預けて積み立てておく方法です。配当金は据置かれている間、複利で利息がつくため資金がさらに増え、満期保険金と一緒にまとめて受け取ることができます。途中で自由に引き出せるかどうかは商品によりますが、基本的には教育資金として満期まで確実に積み立てたい場合に有効な受取方法です。
- 保険金買増 – 配当金で一時払いの追加保険料を払い、保険金額を増やす方法です。いわば配当金で学資保険の「追加契約」を行うイメージで、将来受け取る満期金や死亡保障などが増額されます。配当金を再投入して教育資金の上乗せに充てたい場合に適した方法ですが、その分配当金を現金等で自由に使うことはできなくなります。
- 相殺配当 – 配当金を毎回の保険料に充当し、保険料の支払いと相殺する方法です。配当金が発生したタイミングでその分の保険料支払が免除・軽減されるため、契約者の実質的な負担を減らす効果があります。配当金を積み立てるよりも、月々の出費軽減を優先したい場合にメリットのある受取方法です。ただし配当金を受け取っても満期金など契約上の受取額は増えない点には留意が必要です。
- 現金受取 – 配当金が発生する都度、現金で受け取る方法です。契約者の口座振込などで配当金を払い出す形になりますが、学資保険など個人契約では採用されることが少ない方式です。配当金をその都度生活費や他の目的に充当できる反面、やはり教育資金としては積み上がらないため、学資保険ではあまり選択されない方法と言えるでしょう。
配当金にかかる税金と確定申告
保険の配当金には原則課税されません。株式の配当と異なり、契約者配当は受け取っても基本的に所得税の対象とならないため、配当金だけを契約期間中に受け取る場合、税金はかかりません。ただし、配当金の受け取り方やタイミングによっては課税扱いが変わります。
- 契約期間中に配当金を受け取る場合:学資保険の契約期間中に支払われた配当金は非課税です。例えば毎年配当型で在学中に受け取った配当金などは課税されません。ただし、その年に生命保険料控除を受ける際は、配当金で実質保険料負担が軽減されているため、支払保険料から受け取った配当金額を差し引いて申告する必要があります。
- 満期保険金と同時に受け取る場合:契約満了時に満期保険金とまとめて配当金を受け取るケースでは、その配当金部分も課税対象になります。契約者(親)が受取人の場合がほとんどなので、この配当金は契約者の一時所得として所得税の課税対象となります。実際には、満期保険金と配当金を合算した受取総額から、それまでに支払った保険料総額と特別控除額(最大50万円)を差し引いた額に対して、一時所得として課税されます。
- 保険金の支払い開始日以後に受け取る場合:学資保険の満期後や死亡保険金支払後に配当金を受け取る場合は課税対象です。例えば、満期金を据え置き、その利息分配当を後から受け取るようなケースは課税されます。一般的な生命保険では年金形式で受け取れば雑所得、一括受取なら一時所得になりますが、学資保険では満期一括受取が普通のため、配当金は基本的に一時所得扱いになります。いずれにせよ、契約が消滅した後に受け取る配当は課税される点に注意しましょう。
配当金以外で学資保険を選ぶポイント
学資保険を検討する際は、配当金の有無だけでなく、保障内容や貯蓄性など総合的に商品性を比較することが重要です。特に以下のポイントは見落とせません。
- 返戻率: 支払った保険料に対して最終的に受け取れる祝い金・満期金の割合を示す返戻率は、学資保険選びで最重視したい指標です。返戻率が高いほど満期までに増やせるお金が多くなります。ただし返戻率は保険会社や商品プラン、払い込み期間や払込方法によっても変わるため、複数商品の試算を比較しましょう。一般に保障が少ないシンプルな商品ほど返戻率が高い傾向にあります。
- 保障内容: 学資保険には契約者(親)の万一の際に保険料払込免除となる保障が標準で付いています。加えて商品によっては、契約者の死亡時に養育年金といった年金形式の保障が出るタイプや、被保険者である子どもの死亡保障額の設定が異なるタイプがあります。一般的に、契約者の死亡保障を手厚くしたタイプや子どもの死亡時に満期金同額が出るタイプよりも、保障を最低限に抑えて教育資金準備に特化したタイプの方が返戻率は高くなる傾向があります。すでに親の死亡保障が別の保険で十分なら、学資保険は子どもの教育資金に特化したシンプルな商品を選ぶほうが合理的でしょう。
- 祝い金の有無: 小・中・高校入学時などに祝い金を受け取るか、満期にまとめて受け取るか決めましょう。祝い金付きは途中で資金を受け取れますが、その分満期までの積立額が減るため返戻率は低下しがちです。特に大学進学時の費用準備を重視するなら「祝い金なし型」のほうが有利です。一方、家計状況によっては各進学時に祝い金があると助かる場合もあるため、ご家庭の教育費のニーズに応じて選びましょう。
- 受取タイミング: 満期保険金をいつ受け取れるかもチェックポイントです。多くは子どもが高校卒業~大学入学時、または大学卒業時に満期金を受け取れるよう設計されています。大学入学前にまとまった資金が必要なら18歳満期型、在学中の仕送りや卒業時まで見据えるなら22歳満期型など、自分たちが必要とするタイミングに合った商品を選ぶことが大切です。また商品によっては満期金を分割で受け取るタイプもあります。ですが、一括受取に比べ利息計算期間が短くなる分、総受取額は若干少なくなります。受取タイミングは早ければ早いほど返戻率は下がる傾向があるため、特別な理由がなければできるだけ遅い時期にまとめて受け取るプランの方が効率的といえます。
以上のように、配当金の有無だけでなくトータルの保障内容と貯蓄性のバランスを見極めることが重要です。返戻率を上げるには祝い金無し・受取遅め・短期払い込み等の工夫が有効ですが、その分途中の保障が手薄になったり保険料負担が大きくなる点とのトレードオフになります。ご家庭の方針に合わせて何を優先するか検討しましょう。
おすすめの学資保険商品と資料請求の案内
学資保険の商品選びに迷ったら、専門家による比較・解説記事も参考になります。例えばベビーカレンダーの学資保険特集記事では、親の保障タイプ別におすすめの学資保険商品が紹介されています。特に保障を絞って返戻率を重視するタイプの学資保険としてソニー生命の学資保険などが取り上げられており、子どもの死亡保障を最低限に抑えることで進学時の受取額を効率的に増やせると解説されています。興味のある方は以下のリンクから詳細をご覧ください。