中学生からでも学資保険は入れる?遅いといわれる理由
結論から言うと、中学生になってから学資保険に加入すること自体は可能です。しかし、一般的には「手遅れ」とも言われています 。子どもが中学生になってから学資保険に加入しても、意味がないのでしょうか。ここでは、その理由を詳しく見ていきましょう。
中学生からは学資保険に入れないことが多い
学資保険には子どもの年齢による加入制限があります。多くの保険会社では加入できる子どもの年齢上限が5〜7歳程度で、中学生(12〜15歳)が加入できる商品はほとんどありません。例えば以下の通り、主要各社の学資保険は概ね小学校入学前までしか加入できません。
- 日本生命「ニッセイ学資保険」:0歳~6歳
- ソニー生命「学資保険」:0歳~12歳
- アフラック生命「夢みるこどもの学資保険」:0歳~7歳
- フコク生命「みらいのつばさ」:0歳~7歳
- 太陽生命の貯蓄型学資保険「わくわくポッケ」:0歳~12歳
ごく一部の例外を除き、中学入学時の12歳では加入できる学資保険はほぼ存在しないのが現状です。そのため、「子どもが中学生になってから学資保険に入ろう」と思っても、商品自体が見つからないケースが多いです。
元本割れするリスクが高い
仮に中学生から加入できる学資保険があったとしても、運用期間の短さゆえに満期時の受取額が払い込み保険料総額を下回る、いわゆる元本割れのリスクが高くなります。多くの学資保険は高校入学時(15歳)や大学入学時(18歳)に満期金を受け取る設定ですが、中学生から加入すると実質的な積立期間は3~5年程度しかありません。
学資保険は本来、長期間の運用で利息や配当を積み増し、払い込んだ保険料以上の学資金を受け取ることを期待する商品です。しかし期間がわずか数年では十分な運用益を得ることが難しく、結果として受取額が払込総額を下回ってしまう可能性が高まります。実際に、太陽生命の学資保険(12歳まで加入可)で子ども12歳から契約した場合のシミュレーションでは、毎月の保険料約1.5万円に対し返戻率は約95%前後と100%を下回る結果になっています。つまり払込保険料よりも受取額が少なくなる計算で、これは元本割れの状態です。
例: 太陽生命の学資保険(子ども12歳、満期学資金100万円)では、契約者が35歳の場合の月払い保険料約14,523円に対し返戻率95.6%、契約者50歳の場合は月払い約14,660円で返戻率94.7%と試算されています。どちらも100%未満で、短期間契約の返戻率の低さが分かります。
このように中学生からでは十分な増額効果を得られず、元本割れリスクを抱えることになるため「遅い」と言われるのです。
保険料が高くなる
学資保険は目標額に達するよう保険料を積み立てる仕組みのため、加入時期が遅くなると月々の保険料負担が大きくなる点も見逃せません。例えば同じ200万円の満期学資金を用意する場合でも、0歳から始めた場合と12歳から始めた場合では月々の保険料が約3倍も異なるシミュレーション結果があります。
- 0歳で加入した場合の月額保険料:約10,450円
- 12歳で加入した場合の月額保険料:約29,270円(※契約者30歳の場合の試算)
短期間で同額を貯めようとすると毎月の積立額を大幅に増やす必要があり、家計の負担が重くなってしまいます。中学生からでは進学(高校・大学)まで時間がないため保険料払込期間も短縮せざるを得ず、その結果、一家の収支に占める保険料負担割合が高くなりがちです。
以上の理由から、中学生からの学資保険加入は「厳しい・手遅れ」と判断されることが多いです。
中学生からでも学資保険に入るメリット
「中学生からでは遅い」とはいえ、12歳で学資保険に加入することにも、いくつかのメリットはあります。短期間加入ゆえのデメリットと比較しつつ、以下の利点を押さえておきましょう。
万一の時に教育資金を受け取れる
学資保険最大の特徴は、契約者(親)に万一のことがあった場合でも教育資金の受け取りが保障される点です。具体的には、契約者である親が死亡・高度障害状態になると、それ以降の保険料支払いが免除され、満期時には予定通り学資金(祝金や満期保険金)を受け取ることができます。この仕組みにより、万一の場合でも子どもの進学資金を確保できるのです。
📝補足: 学資保険の「保険料払込免除特約」と呼ばれる機能により、契約者の死亡や重度障害時には保険料の支払いが不要になります。その後、契約は継続し、お子さんが所定の年齢に達した時に学資金を100%受け取れるようになっています。これは一家の大黒柱に何かあっても教育費を準備できる安心材料と言えるでしょう。
ただし注意点として、学資保険の場合、契約者に万一のことがあってもすぐに保険金が支払われるわけではありません。あくまで所定の学資金支給時期(高校入学時や大学入学時など)に受け取る仕組みです。そのため、契約者が死亡した直後に必要となる生活費や進学準備金については、別途死亡保険や貯蓄で備えておく必要があります。
生命保険料控除の対象になる
学資保険の保険料は、税制上生命保険料控除の対象になります。年末調整や確定申告の際、支払った学資保険の年間保険料に応じて所得税・住民税の控除(減税)を受けられるのです 。具体的には学資保険は「一般生命保険料控除」の区分に該当し、年間最大4万円(所得税)・2.8万円(住民税)までの控除枠で税負担を軽減することが可能です(※新制度下の一般生命保険料控除の場合)。
この控除を活用すれば、多少なりとも実質的な負担を軽減できます。例えば年間保険料が5万円の場合、その一部が所得控除されることで結果的に数千円程度税金が安くなるイメージです。
📝補足: 生命保険料控除は、「その年に支払った保険料」に応じて一定額が所得から差し引かれる制度です。学資保険は子どもの生存を条件に満期保険金が出る契約形態上、生命保険契約の一種として扱われます。そのため、払い込んだ保険料の額に応じて税金の還付・減額を受けられるのです。
確実に教育費を貯めることができる
「つい毎月の貯金を後回しにしてしまう」「お金があると別の用途に使ってしまいがち」といった方にとって、学資保険は強制的に教育資金を積み立てられる仕組みであることも大きなメリットです。
銀行預金だといつでも引き出せるため意思が弱いと貯蓄が途中で滞ってしまう可能性があります。しかし学資保険は契約期間中は解約しない限り簡単に現金化できないうえ、毎月決まった額の保険料を払い込まなければなりません。半強制的に積み立てることで「気付いたら教育費が貯まっていた」という状態を作りやすいのです。
また学資保険は満期学資金の受取時期が契約時に決まっているため、「目的外の出費に流用せず、確実に子どもの進学時に備えられる」という安心感も得られます。計画的な貯蓄が苦手な方でもコツコツ貯められる仕組みと言えるでしょう。
ただし、途中解約すると元本割れする点やインフレによる貨幣価値の目減りリスクなどには留意が必要です 。あくまで「確実に貯める」代わりに「柔軟な引き出しはできない」という性質であることを覚えておきましょう。
中学生から入れる2つの学資保険
中学生からでは加入できる学資保険商品は非常に限られますが、もし検討するとすれば次の2つが候補になります。
1つは業界でも人気のソニー生命「学資保険」、もう1つが太陽生命ダイレクトの「学資保険(わくわくポッケ)」です。それぞれの特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。
ソニー生命の学資保険
ソニー生命の学資保険は、契約件数152万件を突破しており学資保険ランキングで常に上位に入る人気商品です。貯蓄性の高さや手厚い顧客対応で評価されていますが、中学生からの加入という観点では注意点もあります。
特徴・メリット:
- 高い返戻率: 条件次第では返戻率(払込保険料に対する受取学資金の割合)が最大121.5%にも達します。例えば0歳契約、22歳満期、10歳払込完了のように有利な条件を満たすと、支払った保険料より約21%も多い学資金を受け取れる設計です。このように業界トップクラスの貯蓄性を持つため、「どうせ入るなら増える学資保険が良い」という方に適しています。
- 万一時の保障(払込免除): 契約者に万一のことがあれば以後の保険料支払いが免除され、満期学資金は契約どおり受け取れます。学資保険共通のメリットですが、ソニー生命にも、この子どもの将来を守る保障機能が付いています。
- オーダーメイド設計: 専任のライフプランナーとの対面相談を通じて、一人ひとりに合わせたプラン設計ができます 。受取時期を高校・大学入学に合わせるか、毎年受取型にするか(ソニー生命ではⅠ型~Ⅲ型のプランあり)、払込期間を短縮するかなど、家庭の方針に沿った柔軟なプランニングが可能です。
- 信頼性と実績: ソニー生命は開業以来安定した業績推移を示しており、顧客満足度も96.7%と高水準です。大手の安心感から「預けたお金を任せやすい」との声もあります 。
デメリット:
- 加入手続きの手間: ソニー生命は対面コンサルティング重視のため、インターネットで気軽に契約できない点がデメリットとして挙げられます。申込には担当者との面談が必要で、手続きにやや時間がかかります。またクレジットカード払い非対応で口座振替が基本となるなど、支払い方法の自由度も低めです 。
- 途中解約時のペナルティ: これは学資保険全般の注意点ですが、契約期間中に解約すると多くの場合解約返戻金が払込総額を下回り損失が発生します 。ソニー生命の学資保険も例外ではなく、中途解約は元本割れリスクが高いです。長期間資金を拘束される点がデメリットになることもあります。
- 加入時期が遅れると返戻率低下: 仮に幼児期に加入できる場合でも、子どもの年齢が上がるほど保険料が高くなり返戻率が下がる傾向があります。例えば1歳より0歳、3歳より1歳で入った方が有利で、3歳以上になると「学資保険に入るメリットは少ない」と言われるほどです。早期加入が前提の設計のため、加入時期が遅いとソニー生命の高返戻率の恩恵は受けにくくなります。
総評: ソニー生命の学資保険は「高い貯蓄性」を誇る商品であり、子どもが小さいうちから備えるには非常に有力な選択肢です。とはいえ子どもの年齢が上がれば上がるほどメリットが減っていくため、今から検討する場合はソニー生命の商品そのものより、「なぜ早期加入が重要か」を学ぶ材料と考えると良いでしょう。もし下のお子さんがいて加入を検討できるなら、ソニー生命は第一候補に挙がるでしょうが、中学生のお子さん向けには次に紹介する太陽生命の学資保険のような別の手段を検討する必要があります。
太陽生命ダイレクトの学資保険
太陽生命が提供する「学資保険 わくわくポッケ」は、業界初のインターネット完結型学資保険として注目されています。2023年8月より太陽生命のダイレクトチャネル(スマ保険)で販売が開始され、中学生からでも加入可能な数少ない学資保険商品です。その特徴と利点・欠点を見てみましょう。
特徴・メリット:
- 中学生から加入可能: 太陽生命の学資保険(わくわくポッケ)は子どもの加入年齢上限が12歳と比較的高く設定されています。そのため、中学生のお子さんでも加入することが可能です。「学資保険はもう無理」と諦めていた家庭でも検討対象にできます。
- ネットで申し込み可能: わくわくポッケは、業界で初めてインターネットだけで契約手続きが完結する学資保険としてリリースされました。保険ショップや対面相談に行かなくても、自宅で申込から契約までできる手軽さがメリットです。忙しい親御さんでも時間を選ばず加入手続きが可能で、気軽に試算や申し込みができます。
- 少額からの保険料設定: 「1,000円台から入れるお手頃な学資保険!」とうたっており、月々の保険料を比較的少額からスタートできます。プラン内容にもよりますが、家計に合わせて無理のない保険料で設定しやすい点は魅力です。特にダイレクト商品化に伴い、保険料計算の見直しや短期払制度の導入で返戻率向上が図られています。
- プランの選択肢が豊富: わくわくポッケには2つの受取プランがあり、①大学入学時に学資金をまとめて受け取る「Ⅰ型」と、②高校入学時と大学入学時に分けて受け取る「Ⅱ型」から選べます。また満期時には「満期祝金」として基準学資金額の100%または20%を上乗せするオプションも選択可能です。払込終了年齢も20歳満期契約なら10歳・12歳・15歳から選べる柔軟性があり、ライフプランに応じた設計ができます。
- 早期の払込完了とタイムリーな支給: 払込満了年齢を子どもの10歳や12歳といった早期に設定できるため(※払込期間5年以上の制約あり)、教育費のかかる高校・大学在学中には保険料負担が無いように調整できます。また学資金の支払い月を10月としており、推薦入試などで通常より早く入学金が必要になる場合にも対応できる工夫があります。このように支給タイミングが実情に合っている点もメリットです。
- 保障機能と選択肢: 保険料払込免除はもちろん、必要に応じて育英年金特約や医療保障などの特約を付加することも可能です。学資保険としての貯蓄機能に加え、家庭のニーズに合わせて一定の保障を組み込める柔軟さも特徴と言えます。
デメリット:
- 返戻率が低め(短期契約時): 中学生から加入できる数少ない商品ではありますが、その分返戻率は高くはありません。特に12歳から契約して18歳満期のような短期契約の場合、前述の通り返戻率95%前後と元本割れになる可能性が高いです。実際、子ども12歳・満期200万円のケースでは払い込んだ保険料総額が受取額を上回るシミュレーション結果が出ています。貯蓄性という点では早期加入の学資保険に劣るため、「増やすこと」より「確実に用意すること」に重きを置く商品と考えましょう。
- 為替リスクなし=低利率: (太陽生命の学資保険自体の欠点ではありませんが)近年の超低金利下では円建て学資保険の運用利率が低いため、大きな増加は期待できません。他の運用型商品(後述の新NISAや外貨建て保険など)と比べるとリターンの可能性は限定的です。「増えなくても良いから元本だけは確保したい」方向けと言えます。
- 途中解約時のコスト: 他の学資保険同様、途中で解約すると解約控除金が発生したり、払込期間中の解約返戻金が低く抑えられていたりします。短期間で資金を引き出す目的には適さず、契約したら満期まで継続する前提でないとメリットを活かせません。契約後に状況が変わっても、柔軟に引き出せない点はデメリットです。
- 対面相談がない: ダイレクト商品ゆえに保険外交員や担当者の対面サポートが無い点をデメリットと感じる方もいます。ソニー生命のように手厚い相談サービスはないため、自分で内容を理解し判断する必要があるのです。しかしこれは裏を返せば中間コストが省かれているということでもあります。十分に商品内容を把握したうえで申し込めば、大きな問題ではないでしょう。
- 為替差益は期待できない: (こちらは外貨建て保険との比較でのデメリットですが)わくわくポッケは円建て保険です。円安による為替差益は得られない代わりに、円高による元本目減りリスクもありません。安全性重視の反面、大きな利益が出るタイプではない点は認識しておきましょう。
総評: 太陽生命ダイレクトの学資保険「わくわくポッケ」は、中学生からでも加入できる貴重な学資保険です。ネット完結で手軽に申し込めるため「今から学資保険に入りたいけど間に合う商品がない…」という場合には検討する価値があります。もっとも、短期間契約では増える見込みが薄いため、確実に資金をキープする手段として割り切ることが大切です。「貯蓄が苦手だから保険で強制的に積み立てたい」「万一の保障も一応つけておきたい」という場合には良い選択肢になるでしょう。
中学生から教育資金を準備するその他の方法
学資保険以外にも、中学生のお子さんがいるご家庭がこれから教育資金を貯める方法はいくつか存在します。ここでは代表的な方法を4つ紹介しますので、学資保険と併用したり代替手段として活用したりすることで、柔軟に教育費準備を進めましょう。
定期預金や積立預金
もっとも基本的な方法は、銀行の定期預金・積立預金でコツコツ貯めることです。
- 安全性: 定期預金は預金保険制度の対象で、万が一銀行が破綻しても元本1,000万円までとその利息が保護されます。したがって元本割れの心配なく安心して預けられます。学資保険のように元本割れリスクはゼロです。
- 確実性と流動性: 普通預金口座から毎月決まった額を自動で定期預金に積み立てる設定にすれば、半強制的に貯蓄できます。必要に応じて中途解約で引き出すことも可能なので、万一の出費時に柔軟に対応できる利点もあります。途中で使ってしまう誘惑にさえ負けなければ最も確実な貯蓄方法と言えるでしょう。
- 低金利: デメリットは現行の低金利です。利息はごくわずかで、お金は増えません。例えば年利0.002%では100万円預けても年200円程度にしかなりません。インフレが進むと実質目減りする可能性もあります。ただ預ければ確実に貯まるという点では有効です。
- 工夫: 児童手当などを毎回そのまま定期預金に回す、ボーナス時に定期預金に上乗せするなど、基礎的な貯金習慣を作ることが大切です。定期預金で貯蓄の土台を作り、次に述べる他の方法と組み合わせて増やす工夫をすると良いでしょう。
新NISAなどの投資信託
近年注目されているのが、NISA(少額投資非課税制度)を活用した投資信託による積立です。2024年から制度が刷新された「新NISA」では非課税枠が拡大・恒久化され、より使いやすくなりました 。
- 資産運用による増加期待: 投資信託(ファンド)で運用すれば、預金より高い利回りで資産が増える可能性があります。例えば年利3-5%程度で運用できれば、数年~10年スパンで預金より大きく教育資金を増やすことも夢ではありません。もちろんマーケット状況によりますが、利益が出ればその分教育費に余裕が生まれます。
- 非課税メリット: 新NISAでは、年間最大360万円までの投資額に対し売却益や配当が非課税になります(つみたて投資枠と成長投資枠の併用可)。従来のNISAより非課税枠が大幅拡大・期間無期限化されており、長期の資産形成に適した制度となりました。利益に本来20%課税されるところ、新NISA内なら税金0円で運用益を再投資できるのは大きな利点です。
- リスクと注意点: 投資である以上元本保証はなく、リスクが伴います。株式市場の変動次第では元本割れする可能性もあります。また中学から大学入学まで期間が5~6年と比較的短いため、リスク資産の比率を高くしすぎるのは危険です。長期分散投資向けの商品を中心に、無理のない範囲で積み立てるのが基本です。
- ジュニアNISA終了: かつて未成年者向けにあったジュニアNISA制度は、2023年で新規投資を終了しました。現在は親名義で運用し、将来子に渡す形になります。2024年以降の新NISAは18歳以上が対象ですので、お子さんが高校卒業時に自分でNISA口座を開設することも可能です。
- 併用のススメ: 投資は値動きがあるため、安定した預金と組み合わせて運用するのがおすすめです。例えば毎月2万円を預金、1万円をNISA枠で投資信託、といった形でリスクとリターンのバランスを取ると良いでしょう。「攻め」の運用で増やすことと、「守り」の貯蓄で元本を確保することを両立させるイメージです。
低解約返戻金型終身保険
低解約返戻金型終身保険とは、貯蓄性のある終身保険の一種で、払込期間中の解約返戻金を低く抑える代わりに保険料を割安にした商品です。払い込み完了後は返戻率(解約返戻金/払込保険料総額)が高くなるため、長期運用すればお金を増やせる可能性があります。
学資保険の代替として、親を被保険者とする終身保険に加入し、子どもの進学時に解約して資金を取り出す方法があります。
- メリット(保障面): 終身保険ですから、契約者(親)に万一のことがあれば速やかに死亡保険金が支払われます。この死亡保険金額は学資保険の満期金より大きな額に設定できる場合が多く、より手厚い保障になります。また保険期間は一生涯続くため、教育資金に使わなかった場合でも老後資金や相続財産として保険をそのまま活かすことが可能です。
- メリット(貯蓄面): 払込終了後長く持てば解約返戻金が増えていき、学資保険より高い返戻率を狙える商品もあります。例えば子どもが小さい頃から親が終身保険に入っておき、18歳時に解約すれば105%程度の返戻率で教育資金を取り出せるケースもあります。さらに契約者貸付を利用すれば解約せずに資金を借り入れることも可能と柔軟性も高いです。
- デメリット: 払込期間が長期(一般に10年以上)になるため、中学生から加入した場合子どもの進学時期にはまだ返戻率が低く元本割れしてしまう点に注意が必要です。例えば12歳から払い始めて6年後の18歳で解約すると、払込期間が短すぎて返戻金が払込総額を下回る可能性があります。したがって学資目的で使うなら、本来は子どもが小さいうちに加入するのが望ましい商品です。中学生からでは十分に増やせないまま解約することになりかねません。
- ポイント: 中学生から低解約返戻金型終身保険を利用する場合は、「教育資金より保障重視で考える人」「学資保険代わりに一応貯蓄性も欲しい人」に向いています。万一の際には高額保障を得つつ、使わなければ老後まで置いて増やせるという保険と貯蓄のハイブリッド的な位置づけです。反対に、確実に18歳で資金が必要な場合に中学生から入り直す手段としては効果が薄いので、他の方法との併用や保障を得る目的で検討するとよいでしょう。
外貨建て保険
外貨建て保険は、保険料を米ドルや豪ドルなどの外貨で運用する商品です。学資保険としての専用商品ではありませんが、外貨建て終身保険や外貨建て年金保険を活用して教育費を準備するケースもあります。
- メリット: 最大の特徴は海外通貨の金利や為替差益を期待できる点です。米ドルや豪ドルは日本円より金利水準が高いため、外貨建て保険の方が利回りが良く、長期運用で円建てより大きく増える可能性があります。また円安に振れれば為替差益で受取額が増えるチャンスもあります。低金利の日本に比べて有利な運用条件を享受できる点は魅力です。
- デメリット: 為替リスクと手数料が伴います。円と外貨の交換時には為替レート変動の影響を受け、円高になれば受取額が目減りするリスクも忘れてはいけませんす。また為替手数料や契約時の初期費用、解約控除など円建て保険にはない各種手数料も発生します。例えば1米ドルあたり数銭~数十銭の両替手数料がかかり、積み重ねると運用益を圧迫します。このように、想定外のコストがかかる可能性がある点にも注意が必要です。
- 流動性: 外貨建て保険も長期契約が前提で、中途解約すれば手数料負担や元本割れリスクがあります。外貨建ての場合、短期で解約すると為替差損も被りやすいため、できれば子どもが小さい頃から始めて18歳以降に解約するのが理想です。中学生から始める場合、大学入学まで数年では運用期間が足りず、大きなメリットを享受しにくいです。
- ポイント: 外貨建て保険は、リスクを理解している上級者向けとも言えます 。中学生から教育資金を準備する手段として選ぶ場合は、為替リスクも含め十分な知識を身に付けたうえで加入することが大切です 。安全に貯めるだけなら円建て預金や学資保険、増やすならNISAでの投資信託といった他の手段があります。外貨建て保険はそれらの中間的な位置付けで、「多少リスクを取っても増やしたい」「外貨にも分散したい」という場合に検討すると良いでしょう。
上記のように、学資保険以外の方法にはそれぞれ一長一短があります。元本割れリスクのない預金からリターン狙いの投資まで組み合わせることで、中学生からでも効率よく教育費を準備することが可能です。大切なのはご家庭の状況に合った方法を選ぶことであり、必要に応じてファイナンシャルプランナーや有識者に相談しながら計画を立てると安心です。
そもそも高校と大学の教育資金にはいくら必要?
具体的な計画を立てるためには、高校・大学でどのくらいの教育費がかかるかを把握し、目標額を設定する必要があります。ここでは、中学生から準備を始める場合に想定すべき教育費と、そのための月額積立シミュレーションを確認していきましょう。
まず、高校3年間と大学進学に要する平均的な学費について見ていきます(文部科学省等の調査データより)。
- 高校の学費(3年間の平均): 公立高校約154万円、私立高校約316万円。特に初年度に多く費用がかかり、1年目は公立で約63万円、私立で約130万円とされています 。この内訳に含まれているの、授業料の他、入学金、施設設備費、教材費、通学費などです。公立高校には授業料無償化制度がありますが、それでも制服代や教科書代など諸費用は必要です。私立は入学金・授業料が高いため総額が約2倍に上ります。
- 大学の学費(4年間の平均): 国公立大学(4年)約242.5万円、私立大学文系(4年)約407.9万円、私立大学理系(4年)約572.8万円。国公立は授業料標準額として年約54万円(4年で216万円)+入学金などでこの水準です。一方私立は文系・理系で差がありますが、文系で年間100万円強、理系で年間140万円程度の学費負担となります。医学部や薬学部などはさらに高額です。また自宅外通学の場合は生活費も別途かかります。
上記の金額を合算すると、高校から大学卒業までに必要な学費総額はケースによりますが大まかに以下のようなイメージです。
- オール公立(高校も大学も公立): 約154万円 + 約242万円 = 約400万円弱
- 高校公立・大学私立文系: 約154万円 + 約408万円 = 約562万円
- 高校公立・大学私立理系: 約154万円 + 約573万円 = 約727万円
- 高校私立・大学私立文系: 約316万円 + 約408万円 = 約724万円
- 高校私立・大学私立理系: 約316万円 + 約573万円 = 約889万円
在学中の仕送り・交通費などを含めれば、さらに費用は嵩みます。加えて高校・大学とも初年度にまとまった金額が必要になるため、進学のタイミングで数十万~百数十万円単位の現金を用意しておく必要があります。
では、中学生からこれらを準備するには毎月どの程度の積立が必要かをシミュレーションしてみましょう。
ケース:「大学入学時に200万円を用意する」
例えば大学入学時までに入学金や初年度学費などのための200万円を貯めることを目標にするとします。中学入学時(仮に12歳)から大学入学時(18歳)まで6年間あるとすると、単純計算で毎年約33.3万円、ひと月あたり約2.8万円の貯蓄が必要です。現実的には高校在学中にも学費の支出があるため、高校費用を払いながら並行して月3万円前後を大学資金として積み立てるイメージです。
ケース:「高校入学時に50万円、大学入学時に150万円を用意する」
高校進学でも私立の場合、入学金が必要になります。中学卒業までの3年間で50万円(月約1.4万円)、その後高校3年間で150万円(月約4.2万円)を貯める計画なら、高校入学時と大学入学時それぞれに目標額を準備できます。公立高校であれば高校入学時はさほど必要ありませんが、大学資金として高校在学中に月4~5万円は積立したいところです。
ケース:「総額500万円を6年で準備する」
高校・大学トータルで公立/私立の組み合わせ次第では、500万円程度必要になるケースがあります。その場合、6年で500万円貯めるためには年間約83万円、ひと月あたり約6.9万円の積立が必要です。これはかなり負担が大きい額で、児童手当やボーナスも総動員しないと難しいでしょう。実際には、奨学金や教育ローンも併用しながら不足分を補うことになるケースが多いです。
以上の試算からも分かるように、中学生から教育費を貯め始める場合、毎月の貯蓄額は数万円単位となります。家計に占める割合として決して小さくない負担ですが、進学までの時間が限られているため致し方ありません。無理のないプランを立てるには「高校時点・大学時点でそれぞれいくら必要か」を明確にし、可能な範囲で逆算して積立目標を設定しましょう。
幸い、公立高校であれば授業料無償化により授業料負担はありませんし、大学も奨学金や支援制度で授業料減免を受けられる場合もあります。次章で述べる公的支援制度も視野に入れつつ、「不足しそうな分をどう貯めるか」「どの制度を利用するか」を検討することが大切です 。
学資保険の準備が難しいときに使える制度
「子どもが中学生になるまで学資保険に入らず、今からでは貯蓄も間に合わない」という状況でも、公的な支援制度や教育ローンを活用することで進学資金を確保できる可能性があります。ここでは、学資保険で準備できなかった場合に頼りになる主な制度を紹介します。
高等教育の修学支援新制度
「高等教育の修学支援新制度」とは、いわゆる大学・専門学校の授業料等減免+給付型奨学金制度(大学無償化制度)です。2019年に創設され、2020年4月から本格実施されたもので、住民税非課税世帯およびそれに準ずる低所得世帯の学生を対象に、以下2つの支援が受けられます。
- 授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)返還不要の給付型奨学金の支給
この制度に該当すれば、進学先の学校種(大学・短大・高専・専門学校)に応じて入学金や授業料が全額~一部免除され、さらに日本学生支援機構(JASSO)から生活費のための給付奨学金(月数万円)を受け取れます 。まさに「経済的理由で進学を諦めない」ための制度で、一定の要件下では大学や専門学校などの学費が実質無償化されます。
対象となる世帯収入の目安: 世帯年収約380万円程度まで(夫婦と子1人のモデル世帯の場合)。住民税非課税水準(年収270万円程度)であれば満額支援、それを超えても段階的に支援区分Ⅰ~Ⅲが設けられています。2024年度以降、この支援対象がさらに拡大され、多子世帯(子ども3人以上)の年収要件緩和など、制度の充実が図られる予定です 。
利用方法: 高校3年時に予約申請、もしくは大学等入学後に在学採用の申し込みを行います。学校を通じて案内があり、書類審査で支援区分が決定します。採用されれば在学中は条件継続確認のうえ支援が続きます。
中学生のお子さんがいる段階では、「自分たちがこの制度の対象になり得るか」を頭に入れておくと良いでしょう。対象となる場合、進学時の費用負担が大幅に軽減されます。ただし支援額は進学先や世帯区分により異なり、全ての費用が賄えるわけではない点に注意が必要です(例えば、自宅外通学の生活費まではカバーされません)。それでも学費面では心強い制度なので、条件に該当しそうなご家庭は高校卒業前に必ず情報収集・申請手続きを行いましょう。
奨学金制度
日本では、大学生の約半数が何らかの奨学金(貸与型奨学金を含む)を利用していると言われています。奨学金制度とは、学生に資金を貸与または給付する制度で、代表的なのが日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。
JASSOの奨学金には大きく給付型(返済不要)と貸与型(返済必要)があります。前述の修学支援新制度の給付奨学金は返済不要ですが、所得制限があります。一方で多くの学生が利用するのは貸与型奨学金で、これは事実上の学生ローン(卒業後返済)です。
貸与型奨学金の種類(JASSOの場合):
- 第一種奨学金(無利子): 成績・家計基準を満たす学生に対し、無利子で貸与されます。月額は進学先や自宅通学/自宅外通学によって定められており、大学生の場合自宅通学で月3~5万円、自宅外で4~6万円程度が上限です。
- 第二種奨学金(有利子): 利子付き(在学中は無利息、卒業後年利上限3%)で貸与されます。第一種より基準が緩やかで、多くの学生が利用可能です。月額は選択制で、上限12万円(大学院は別枠)まで1万円単位で借りられます。必要額に応じて柔軟に設定できます。
奨学金を利用すると、在学中の学費・生活費を借りて賄い、卒業後に分割返済することになります。例えば、無利子奨学金を月5万円×4年借りれば総額240万円を受け取り、卒業後20年かけて月1万円ずつ返済するといったイメージです(有利子の場合この返済額に利息が付加されます)。
メリット: 在学中の親の負担を軽減でき、進学の門戸を広げます。無利子で借りられる第一種は特に家計に優しい支援です。返済は卒業後の本人が行うため、親世代の貯蓄不足を補う手段として有力です。利用者に対する社会的な理解も進んでおり、多くの新卒者が奨学金返済と向き合っています。
デメリット: やはり借金であることは念頭に置く必要があります。卒業時に数百万円の債務を背負うことになり、返済が長期に及びます。就職後の収入状況によっては負担となり、延滞すれば信用情報に傷が付くリスクもあります。近年は返済猶予や減額制度も充実していますが、できれば借り過ぎないことが大切です。
中学生の子を持つ親御さんの立場では、「将来どうしても貯蓄が追いつかなければ、最終的には奨学金で不足分を補うこともできる」と覚えておくと精神的な安心材料になります。ただし奨学金は子ども本人の負担になるため、可能な限り親の準備で賄い、奨学金利用は必要最低限にとどめることが理想です。
国の教育ローン(教育一般貸付)
国の教育ローン(日本政策金融公庫の教育一般貸付)は、日本政策金融公庫が提供する保護者向けの教育費貸付制度です。奨学金が学生本人への融資であるのに対し、教育ローンは保護者が借り入れて学費等に充てるものです。
主な概要:
- 融資額: 子ども1人につき上限350万円まで(留学費用のように一定の要件を満たす場合は450万円まで) 必要な分だけ借りることができます。
- 金利: 固定金利で、2025年4月時点では年2%台(世帯年収や子どもの人数等による優遇制度あり)。金利は借入時の固定で、返済終了まで変わりません。
- 返済期間: 原則20年以内。毎月元利均等返済で、在学中は利息のみ払うことも可能です。例えば350万円を15年で借りると、月々の返済は2万円台後半程度になります(利率や据置期間により異なる)。
- 利用条件: 世帯年収の上限設定があります(子1人の場合790万円程度、子2人890万円程度など)。中間所得層まで幅広く利用可能ですが、高所得層は対象外です 。申し込みには収入証明や進学先の合格通知などが必要で、審査があります。なお、奨学金との併用も認められています。
メリット: 教育資金が不足した場合に不足額をまとめて低金利で借りられる頼もしい制度です。奨学金は毎月定額を受け取る仕組みですが、教育ローンなら入学金などで一時的にまとまった資金が必要な際にも対応できます。固定金利なので将来の金利変動リスクもなく、返済計画が立てやすいです。さらに民間ローンより条件が緩やかで借りやすく、奨学金では足りない場合のセーフティーネットとなっています。
デメリット: やはり借入ですので、返済義務があります。親が借りて返済するとはいえ、高齢で返済期間が長引くと老後の負担にもなり得ます。また上限が350万円までなので、医学部など超高額進学の場合は賄い切れない場合もあります。審査に通らないケースもゼロではありませんが、比較的利用しやすい公的融資です。
利用シーン: 「どうしても貯蓄だけでは間に合わない」「入学金納付の期限が迫っているが資金が足りない」といった場面で強い味方になります。手続きには時間がかかることもあるので、必要になりそうなら早めに情報収集し仮申込しておくと安心です。
上記の制度を組み合わせれば、学資保険に入っていなくても最終的に教育費を工面することができます。高等教育無償化制度で学費負担を減らし、奨学金や教育ローンで不足分を補うことで、「進学できない」という最悪の事態は避けられるでしょう 。
とはいえ、これらはあくまでサポート策です。できる限り自助努力で備え、どうしても難しい部分だけ制度を活用すると良いでしょう。中学生のお子さんをお持ちの今から、貯蓄と制度活用の計画を二本立てで検討しておくと安心です。
まとめ
中学生から学資保険に加入することについて、その是非や代替策を幅広く見てきました。最後に重要ポイントを整理し、今からできる行動を確認しましょう。
- 中学生からの学資保険加入は基本的に難しい: 多くの学資保険は幼児期までに加入する商品であり、中学生からでは加入できる商品自体がほとんどありません。仮に加入できても運用期間が短く返戻率が低いため、元本割れや保険料負担増といったデメリットが大きくなります。そのため「手遅れ」と言われていますが、前提として中学生から無理に学資保険に入る必要はありません。
- どうしても学資保険にこだわるなら太陽生命などが候補: 中学生でも加入可能な学資保険として、太陽生命「わくわくポッケ」があります。ネットで手続きでき少額から積立可能な点は魅力ですが、増える効果は薄いので貯金感覚で確実に用意したい場合に検討しましょう。
- 学資保険以外の方法をフル活用: 定期預金の積立で元本確保しつつ、新NISAで積立投資をして増やすこともできます。余裕があれば外貨建て保険や終身保険での運用も選択肢の一つですが、リスクや特性を十分理解してからにしましょう。「確実性」と「利回り」のバランスを取りながら、ご家庭に合った手段で準備を進めることが重要です。
- 教育費の目標額を設定する: 高校・大学の費用は公私立の組み合わせで大きく異なります。まずは「高校は公立で大学は私立文系なら約○○万円必要」のように、具体的な目標額を把握しましょう 。そして中学から残り年数で割り算し、「毎月○万円貯めれば目標達成できる」という計画を立てます。この計画に沿って家計を見直し、積立額を捻出することが第一歩です。
- 公的支援制度を知っておく: 万一、計画通り貯められなくても最後のセーフティーネットがあります。低所得世帯なら、授業料減免と給付奨学金の修学支援新制度があります。また、誰でも利用できる奨学金貸与制度も心強い味方です 。不足分は国の教育ローンで保護者が借りる手もあります。「貯蓄+制度活用」で最終的に帳尻を合わせることもできるので、諦めずに情報を集めて備えることが肝心です。
行動への提案: 今この時点からできることとして、まずは家計の中で教育費に回せる金額を洗い出し、すぐに積立預金やNISA投資をスタートしましょう。塵も積もれば山となります。並行して、お子さんとも進路の話をしてみてください。公立か私立か、自宅か下宿かで必要資金は変わります。将来像を共有することで、親子で準備する意識が高まるでしょう。また、ご自身で判断するのが難しければファイナンシャルプランナーに相談するのも有効です。無料相談窓口でシミュレーションしてもらえば、より明確なプランが見えてきます。
最後に、中学生のお子さんを持つ親御さんが教育資金準備で大切にしたいのは「今からでも遅すぎることはない」という前向きな姿勢です。確かに時間は限られますが、できることを積み重ねれば成果は必ず出ます。学資保険に入っていなくても悲観せず、本記事で紹介した方法を組み合わせて賢く教育費を蓄えていきましょう。お子さんの将来のために、今日からできる一歩を踏み出してみてください。