【医師監修】風疹になったときの母体や赤ちゃんへの影響は?
【天神 尚子先生監修】
風疹は、風疹ウイルスによる感染症です。2~3週間程の潜伏期間の後、淡紅色の小さい発疹が耳の後ろや顔、手足などに見られ、全身に広がっていきます。発疹以外に発熱、リンパ節の腫れが見られるのが特徴です。俗に「三日ばしか」ともいわれ、比較的症状は軽く、症状が全くない不顕性感染もあります。しかし、妊婦さんが風疹に感染した場合、少し状況が異なってきます。
- 【目次】
- ・風疹にかかってしまったときの母体への影響とは?
- ・風疹にかかってしまったときの赤ちゃんへの影響はどんなものがある?
- ・風疹を発症したときはどうしたらいい?
- ・風疹にならないための予防法とは?
- ・風疹の予防接種はいまからでもできるの?
- ・まとめ
- ・風疹・妊娠初期に関するQ&A
監修者:天神 尚子先生
風疹にかかってしまったときの母体への影響とは?
妊婦さんが風疹に感染すると、一般的な経過と同様に、潜伏期間を経て、発疹や発熱、リンパ節の腫れなどの症状がみられます。リンパ節の腫れは、耳の後ろ、後頭部、首などに出現し、発熱は風疹患者の約半数ほどにみられます。
しかし、風疹に感染した妊婦の約15%~20%は、症状が全くない不顕性感染だといわれています。
風疹にかかってしまったときの赤ちゃんへの影響はどんなものがある?
妊娠12週未満の時期は、胎児の器官がつくられる時期に当たります。そのため、この時期に母体が風疹にかかってしまうと、胎盤を通じて風疹ウイルスが胎児に感染してしまい、先天性風疹症候群(CRS)を発症する可能性があります。
先天性風疹症候群(CRS)の三大症状は、白内障・動脈管開存症などの心奇形・難聴です。そのほかに、小頭症、精神発達遅滞、緑内障、肝脾腫などが生じます。
先天性風疹症候群(CRS)の発症リスクは、妊娠週数が早ければ早いほど高くなりますが、妊娠20週以降では母体が風疹にかかっても、先天性風疹症候群(CRS)を発症することはほとんどないといわれています。
■妊娠週別の先天性風疹症候群(CRS)を発症する割合
・妊娠4週まで・・・50%以上
・妊娠8週まで・・・40%~50%
・妊娠12週まで・・・30%~40%
・妊娠16週まで・・・10%~30%
・妊娠20週まで・・・数%
風疹を発症したときはどうしたらいい?
いまのところ風疹に対する特効薬というものはなく、妊婦さんの症状に対する治療は、対症療法のみとなっています。しかし、症状を緩和させることができる対処法がありますので、さっそくその内容についてご紹介していきます。
1.首やわきの下を冷やす
発熱の症状が見られている場合、首やわきの下などを冷却ジェルや氷枕などで冷やすようにしましょう。また比較的弱いといわれていますが、発疹のかゆみが出はじめたら、冷たいタオルでかゆい部位を冷やすようにしましょう。
2.水分をこまめに摂取する
発熱の症状が出ると、どうしても汗が大量に出ることで水分を欲する状態になります。ですので、こまめに水分を補給することが大切になります。
3.安静に過ごす
無理に布団に寝なくても大丈夫ですが、なるべく室内で適正な湿度や温度を保った場所で安静に過ごすようにしましょう。
4.体を清潔に保つ
シャワーや温かいタオルで拭く程度にすませ、体を清潔に保ちましょう。
5.医療機関で診察を受ける
発熱や発疹といった初期症状が現れた際は、かかりつけ医に相談し、指示を仰ぎましょう。また症状ががおさまるまでは、外出は控えるようにしましょう。
風疹にならないための予防法とは?
風疹の最も大事な予防法は、ワクチン接種を受けて風疹ウィルスに対する免疫をあらかじめ作っておくことになります。
初期の妊婦健診では、風疹ウイルスへの免疫があるかどうかを調べるHI抗体検査というものがあります。抗体価が8倍未満、8~16倍の場合は、今後風疹に感染し母子感染が生じる可能性があるので、人混みに出歩かないように注意し、人との接触はなるべく避けるようにしましょう。それに加え、外出から帰ってきたときには必ず手洗いやうがいを徹底することも心掛けましょう。
どうしても人混みに行かなければならないときは、必ずマスクを着用するなどして、予防するようにしましょう。また妊婦さんと一緒にいる機会の多い家族を含めた周りの人たちも、予防接種を受けてもらい、風疹に感染しないようにしてもらうことも大切になってきます。
抗体価が32倍~128倍の場合は、正常範囲で、母子感染が生じる可能性は低いと判断されます。そして、抗体価が256倍以上の場合は、風疹に感染し母子感染が生じた可能性があると判断され、再検査(HI抗体とIgM抗体同時測定)と過観察が必要になります。
風疹の予防接種はいまからでもできるの?
妊娠が判明した後に抗体がないことがわかると風疹の予防接種を受けたいところですが、風疹のワクチンは生ワクチンとなっており、風疹を発症する可能性があるので、基本的には受けられないことになっています。
そのため、風疹抗体が低い方は、産後早期に風疹ワクチン接種することをおすすめします。その際は、接種前1カ月(※非妊時であること)と接種後2カ月間は避妊が必要になります。
まとめ
妊娠初期に妊婦さんが風疹にかかってしまうと、生まれてくる赤ちゃんに多大な影響を及ぼす可能性があります。先天性風疹症候群(CRS)は永久的な障害となるものもありますので、絶対に感染しないように妊婦さんは注意しなければなりません。
予防接種は赤ちゃんを授かる前には必ず受けておくようにし、同居する家族にも予防接種を受けてもらうことが重要になってきますね。
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【監修者】
三鷹レディースクリニック院長
天神 尚子(てんじんひさこ)先生
三楽病院産婦人科科長を勤めた後、2004年2月、三鷹レディースクリニックを開業。
三鷹レディースクリニック http://mitaka-ladies.jp/
【関連記事】
・先天性風疹症候群(CRS)の症状や原因、感染経路、治療法について
・妊娠前に済ませておきたい!感染すると怖い「風疹」の予防接種
◆風疹・妊娠初期に関連するQ&A
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