【助産師監修】乳房・乳首(乳頭)のかたち、授乳姿勢の解説とおっぱいを吸いやすくするコツ
出産したら自然に母乳が出てきて、赤ちゃんがゴクゴク飲んでくれるもの……と思っているママも多いかと思います。なかには最初から母乳がたくさん出るママもいらっしゃいます。しかし、多くのママが思っていたのと違った……と感じているのではないでしょうか。そこで、今回は母乳育児がスムーズに進められるような準備についてお話ししていきたいと思います。
- 【目次】
- ・おっぱいのタイプ
- ・おっぱいのタイプに合った授乳方法
- ・おっぱいを吸いやすくするための方法
- ・まとめ
おっぱいのタイプ
妊婦健診で乳首のチェックをしている産院もあるかと思います。その際、助産師はママの乳首の状態が授乳に適しているかチェックして、お産後スムーズにおっぱいをあげられるよう指導をしています。また、お産後はママのおっぱいや乳首の形などによって、おっぱいを飲ませるときの姿勢を工夫し、指導しています。助産師がどのようなところをみているのか、お話ししたいと思います。
●乳首のかたち
【突出した乳頭】
突出している部分が1cm前後あるもの。
【扁平乳頭】
乳輪と乳首がほぼ平面にあるもの。
【陥没乳頭】
乳首が陥没しているもの。
乳輪部周辺を圧迫すると突出するタイプと、圧迫しても突出しないタイプがあります。
【乳頭が大きい】
明確な大きさの基準はありませんが、1cm以上あるものとしていることが多いです。
【乳頸部が細い】
乳首の根元が細くなっている。
経産婦さんに多いようです。
●乳房のかたち
【Ⅰ型】
アンダーバストとトップバストの差が5cm以下のおっぱい。
【Ⅱ-a型】
お椀型のおっぱい。アンダーバストとトップバストの差が5cmあり、乳首の位置がおっぱいの真ん中、あるいは真ん中より上。
【Ⅱ-b型】
お椀型のおっぱい。アンダーバストとトップバストの差が5cm以上あり、乳首の位置がおっぱいの真ん中、あるいは真ん中より下。
【Ⅲ型】
アンダーバストとトップバストの差が5cm以上あり、下垂しているおっぱい 。
おっぱいのタイプに合った授乳方法
母乳育児をすすめるうえで大切なことの1つに、ママと赤ちゃんに合った方法でおっぱいを飲ませることがあります。おっぱいを飲ませるときの姿勢はさまざまです。いろいろな方法を知っておくと、ママのおっぱいや赤ちゃんの状態に合わせて授乳することができますよ。
●横抱き(普通抱き、ゆりかご抱き)
赤ちゃんをママの胸の高さで抱っこし、赤ちゃんとママのおなかを向かい合わせて密着させます。赤ちゃんの頭はママの肘や前腕のあたりに置き、その手で赤ちゃんのおしりか太ももを支えます。
おっぱいだけでなく、育児用ミルクを飲ませるときにもこの抱き方がおすすめです。
●交差横抱き(交差ゆりかご抱き)
飲ませる側のおっぱいと反対側の手のひらと腕で赤ちゃんの肩と背中を支え、指は赤ちゃんの耳の後ろに添えます。次に飲ませるおっぱい側の手でおっぱいを支えます。うまく吸いついたら、おっぱいを支える手を外し、赤ちゃんを抱っこして横抱きにさせることができます。赤ちゃんの頭がしっかり固定されているのでママのおっぱいを深くくわえさせることができます。
ママが赤ちゃんにおっぱいをあげるのに慣れていない最初のころや早産で生まれた赤ちゃん、筋緊張の弱い赤ちゃん、ルーティング反射(赤ちゃんの唇や頬に指や乳首などで触れると追いかけるように顔を動かして、口に含むような動き)や吸啜反射(赤ちゃんの口の中に指や乳首を入れるとそれを吸おうとする動き)が弱い赤ちゃんに適しています。
●脇抱き(クラッチ抱き、フットボール抱き)
赤ちゃんの体をママの脇で支え、赤ちゃんの足がママの背中に来るようにします。ママの手のひらと腕で赤ちゃんの肩と背中を支え、指は赤ちゃんの耳の後ろに添えて頭を支えます。(このとき、赤ちゃんやママの腕を支えるためにクッションや枕などが必要になります。)飲ませる側のおっぱいと反対側の手でおっぱいを支えます。
帝王切開術後、おっぱいが大きいママ、早産で生まれた赤ちゃん、おっぱいの吸い方が弱い赤ちゃんに試してみるとよいでしょう。
●添え乳(寝た姿勢での授乳、添い寝授乳)
ママが横に寝た姿勢で赤ちゃんをママの胸の高さで寝かせ、赤ちゃんとママのおなかを向かい合わせて密着させます。
この姿勢は帝王切開術後や夜間、ママの体調がすぐれないとき、ママの安静が必要なときなど、休みながらおっぱいをあげることができます。
●縦抱き(またがり座り抱き)
赤ちゃんをママの太ももにまたがって座らせ、赤ちゃんの口が乳首の高さにくるようにします。ママの体や赤ちゃんの頭が前かがみになりすぎないよう気をつけましょう。
ママのおっぱいを深く含めないときや小さめの赤ちゃんに合った方法です。
おっぱいを吸いやすくするための方法
ママの乳首が硬いと、赤ちゃんがおっぱいを吸うときにパワーが必要になります。ですので、なるべく赤ちゃんが吸いやすいように乳首をやわらかくしておくとよいでしょう。また、赤ちゃんはママの乳輪くらいまでおっぱいを深く含まないと母乳が飲みとれません。乳首だけでなく乳輪もやわらかくしておきましょう。
●どうしたら乳首や乳輪がやわらかくなるの?
乳首や乳輪をやわらかくするためには、乳頭マッサージをおこないます。妊娠中、乳首を刺激することでおなかが張ってしまうことがあるので注意が必要です。乳頭マッサージを始めるときは、医師や助産師に相談してから始めると安心ですね。
目指す乳頭のやわらかさは、唇から耳たぶくらいのやわらかさです。なかなかやわらかくならない……と焦る必要はありませんよ。少しずつでかまいません。また、乳頭マッサージは妊娠中だけでなく、赤ちゃんにおっぱいを飲ませる前にもおこなうとよいですよ。
●そのほかにも……
妊娠すると、バストサイズが大きくなります。ブラジャーはサイズの合ったものを選びつけるようにしましょう。
また、妊娠中から母乳が出るというママもいらっしゃいます。そのようなとき、おっぱいを搾る必要はありません。汚れを取り除くだけでよいですよ。お風呂に入ったなど、せっけんやクリームなどですべりをよくしてから、指先でやさしく汚れを取り除いてくださいね。
まとめ
今回は、おっぱいの形に着目してお話ししてきましたが、ママのおっぱいのかたちなんて気にせずにおっぱいを飲んでくれる赤ちゃんもいれば、飲みやすそうにみえるおっぱいでも、なかなかその気になってくれない赤ちゃんもいます。「少しでも」赤ちゃんが吸いやすいおっぱいにするために、ママの体調に合わせて準備していきましょう。
◆母乳育児に関するQ&A
- Q.産後、左の乳房のいろいろなところが痛みます
- Q.授乳中ですが胸の奥に鋭い痛みを感じます
- Q.乳腺炎になると母乳の味がまずくなるの?
- Q.乳腺のつまりについて
- Q.混合栄養から完全母乳にしたいのですが
- Q.左右の乳の出が違います
- Q.母乳を停止しても再開できますか
- Q.乳ガンの母乳を飲んだ子どもは、何か影響が出るものなのでしょうか?
- Q.乳が張ってしこりがありますが、どうしたらいいでしょう
- Q.母乳育児を長く続けたいのですが、搾乳機を使ってもOK?
◆授乳の体験談
最初の授乳は出産直後に助産師さんが吸わせてくれました。小さくて必死な姿が本当にかわいかったです! それからは母子同室で吸わせかたがわからず助産師さんに何度も手伝ってもらい授乳しましたが、体重を測ると2gしか増えておらず、育児用ミルクを足すよう指導され、夜中泣きました。それからは軌道に乗って完母でトラブルなく過ごせています! 助産師さんと頑張って吸ってくれたかわいい息子にに感謝です!
たいがママ さん
現在、2人目授乳中です。正直、上の子の初授乳は覚えていません。そして今回は生まれてまもなく、分娩台の上での初めて授乳しました。それまでずっと自分の指をチュパチュパ吸っていたので、助産師さんにお願いしておっぱいを吸わせてみました。誰からも教わってないはずなのに夢中でおっぱいを吸うわが子に妙に感心したのを覚えています。
きょん×2 さん
1人目の最初の授乳からだいぶ経つのですが、感激した感覚をまだ覚えています。私自身も可能であれば母乳で育てたいと思っていたので、病院選びの際に母乳育児に力を入れているということもポイントの1つとしていました。
私は産後入院中はずっとろくに母乳が出なくて、赤ちゃんも自分も授乳に慣れていないので体勢も定まらず、不自然な格好で授乳していました。産後の疲れた体でヘトヘトでしたが、乳首を吸わせる刺激で出るようになるということで、入院中にスパルタ教育をしてもらいました。
生まれる前の授乳への意気込みが強かったため、このままずっと出なかったらどうしようと不安にも思いましたが、幸い、大きさの割によく出るようになってよかったです。
ぽぽ さん