【医師監修】陣痛促進剤の効果・副作用と使うタイミング・使えないケース
出産に至るまでの過程で、陣痛が来なかったり陣痛が弱かったりして「陣痛促進剤」の力を借りることがあります。陣痛促進剤って危険じゃないの? なるべく自然に出産したいと思う人もいるでしょう。ここでは、陣痛促進剤について詳しく解説したいと思います。
陣痛促進剤とは?
陣痛促進剤とは、子宮の収縮を強める作用がある薬剤で、主に誘発分娩や陣痛を促進するために使われます。陣痛促進剤として使われる薬剤には、オキシトシン製剤、プロスタグランジン製剤があります。
陣痛促進剤の効果
オキシトシン製剤
オキシトシンは、子宮平滑筋収縮作用と射乳(母乳を外に押し出す)作用のあるホルモンです。自然の陣痛に近い子宮収縮が得られる半面、妊娠週数や使用する人によっても効果の表れ方に差がみられることがあります。オキシトシン製剤は点滴によって投与されます。その際輸液ポンプを使用することが必須です。
プロスタグランジン製剤
プロスタグランジンは人の体に存在する生理活性物質で、子宮筋を収縮させたり、血管拡張、血圧降下などの作用があります。プロスタグランジン製剤には、プロスタグランジンF2α製剤(PGF2α)とプロスタグランジンE2製剤(PGE2製剤)の2つがあります。
プロスタグランジンE2製剤は、子宮を収縮させるだけでなく、子宮口を熟化(出産に向けて子宮口がやわらかくなること)させる作用があります。しかし、内服によって投与されるため、量の調節が難しく、過強陣痛となる恐れもあるため、最近では陣痛促進の目的では使われなくなってきているようです。
プロスタグランジンF2α製剤は、オキシトシンに比べて効果の現れ方に差が少ないと言われています。プロスタグランジンF2α製剤もオキシトシン同様、点滴によって投与され、輸液ポンプを使用することが必須です。
薬剤は基本的に内服よりも点滴のほうが早く効果が表れます。しかし、点滴の場合でも最初は微量で、陣痛の強さや間隔、胎児の状況を見ながら徐々に薬剤の量を増やしていきます。そのため急激に陣痛促進時の効果が表れるということは滅多になく、効果の現れ方も個人差がみられます。ですので、陣痛促進剤を使用したその日に出産となる場合もありますが、その日のうちに出産に至らない場合は、帝王切開に切り替わったり、翌日仕切り直して再度陣痛促進剤を使用するという場合もあります。
陣痛促進剤の副作用
陣痛促進剤のもっとも代表的な副作用は「過強陣痛」です。その結果、胎児機能不全や子宮破裂、頸管裂傷、弛緩出血などを起こす恐れがあります。そのため陣痛促進剤を使用する際は、分娩監視装置によって陣痛の強さや間隔、胎児の様子を注意深く観察していく必要があります。
そのほかにも、ショック、アレルギー症状、不整脈などの副作用があるため、陣痛促進剤を使用する際には定期的にバイタルサインズ(体温、呼吸数、脈拍数、血圧など)をチェックすることも大切です。
陣痛促進剤が使えない場合がある
陣痛促進剤は誰もが使用できる薬剤ではありません。経腟分娩が可能であるということはもちろんですが、陣痛促進剤の使用にあたり、さまざまな条件があります。
オキシトシン製剤やプロスタグランジン製剤を使用する際、それらの薬剤の同時併用は相乗効果で過剰陣痛になることがあるので絶対におこなってはいけないことになっています。また、プロスタグランジンE2製剤を投与した後に、オキシトシン、あるいはプロスタグランジンF2α製剤を使用する場合には、1時間以上時間をあけて使用しなければなりません。
そのほか、帝王切開や子宮筋腫などの手術の既往がある場合や気管支喘息、緑内障などの合併症がある場合など、陣痛促進剤を絶対に使ってはいけない場合や慎重投与のことがあります。陣痛促進剤の使用に関しては、日本産婦人科学会・日本産婦人科医会の編集・監修で発刊された「産婦人科診療ガイドライン:産科編」にまとめられています。
産婦人科診療ガイドライン:産科編 P290~291 P306(表2)
陣痛促進剤を使うタイミングはいつ?
陣痛促進剤は主に出産をサポートするために使われることが多いですが、その場合、陣痛自体が起きていないときに陣痛を誘発する目的で使用する場合と、微弱陣痛を改善する目的で使用される場合の2つがあります。
誘発分娩
妊娠42週以降の出産は、胎盤機能が低下し胎児の状態が悪化する恐れがあります。そのため、妊娠42週になる前に陣痛促進剤で人工的に陣痛を起こし、誘発分娩をおこなうことがあります。また、陣痛が来る前に破水し、その後も陣痛が来ない場合、感染のリスクが高まるので、誘発分娩となる場合があります。そのほかに、妊娠を継続することで母体、あるいは胎児に影響を及ぼす可能性があると判断された場合などでも誘発分娩をおこなうことがあります。誘発分娩の際、子宮口の熟化を促す処置を先におこなう場合もあります。
陣痛促進
陣痛が来たものの、微弱陣痛によって出産がすすまない場合あります。このままの陣痛では出産まで至らない場合、母体の体力が奪われ、胎児にも危険が及ぶ可能性もあるため、陣痛促進剤を使って陣痛を強めることがあります。
陣痛促進剤にかかる費用は?
基本的に自然分娩の費用は健康保険適用外となっています。陣痛促進剤を使用した際の費用は、陣痛促進剤の使用量や使用目的などに加え、医療機関によって異なります。とはいえ、数千円が加算されるケースが多いです。
まとめ
陣痛促進剤を正しく使うことで、分娩をスムーズに促すことができます。陣痛促進剤を使用する際には、「医師がきちんと説明し、妊婦さんの同意を得ること」が必須条件になっています。きちんと医師の説明を聞き、わからないことや不安なことを解消し、納得したうえで使用することが大切です。
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◆出産に関するQ&A
- Q.立ち会い出産が不安です
- Q.子宮頚管無力症
- Q.狭骨盤での帝王切開
- Q.前期破水による流産は予防できる?
- Q.早産は繰り返しやすいのですか?
- Q.高齢出産と病気治療中の2つの理由で、出産をちゅうちょしています
- Q.帝王切開の手術が痛かったのは麻酔の効きが悪いせい?
- Q.30代後半になると帝王切開になる例が多いのですか?
- Q.体重95kgですが2人目を出産できますか?
- Q.高血圧での出産が心配です
◆出産の体験談
私は自然分娩で2人産んでいますが、どちらも5時間・4時間と安産でした。
1人目は妊娠39週の健診に行ったところ、子宮口が3.5cm開き、モニターでも張りがガンガンきていたのでそのまま入院。そのときはモニターの用紙を見た助産師さんに「痛くないの?」って聞かれ、言われてみればなんとなく下腹部が重痛い?ぐらいで、まだ全然走れる感じでした。
17時過ぎに入院して多少は痛いけど間に眠れる、食べられる、笑顔で喋れるぐらい。21時に抗生物質の点滴をしに呼び出しのあった分娩室へ小走りで移動、点滴を開始して少ししたら急にいきみが来だし、22時には生まれました。
2人目は切迫早産で入院していて、退院時も5分間隔での張りが常にあったので、張りの間隔はあてにならず、とにかく張り+痛み・出血・破水のいずれかがあったらすぐ病院へ! と言われていました。妊娠36週過ぎに退院し、「赤ちゃんが小さめだし妊娠37週までは張り止めを飲んで安静に」との指示だったので、実家で大人しくしていました。
妊娠37週2日の早朝から張りに加えて軽い痛みが出たので病院へ。7時ごろ病院に到着、内診すると子宮口が5cm以上開いていて助産師さんがびっくり! 大慌てで準備を始めていましたが、陣痛も合間に笑ってお喋りできるくらい。10時過ぎにいきみが来だし、あっと言う間に生まれました。
どちらも陣痛自体は耐えられる感じでしたが、急にいきみが来だすので、心の準備がついていかずキツかったです。今3人目妊娠中ですが、無痛分娩する予定。麻酔が間に合うかドキドキです。
cowboyママ さん
1人目
切迫流・早産で寝たきり生活でしたが、生まれたのは出産予定日4日後。生理痛が酷かったから陣痛が来ても半信半疑ではっきりわからず……。前日夜におしるしがあったため、病院に電話して行ったほうが良いか聞いてみました。電話の声を聞いた助産師さんが「普通に会話できてるからまだかな? 午後の健診時間においで」とアドバイスしてくれたので、午後の健診に行って呑気に血圧体重……と測ったら血圧が凄く高い! 変だなーと思いながら普通にNSTをしていたら看護師さんが走ってきて「内診すぐ入って!」と。
そしたら「子宮口8cm、陣痛来ているよ!」と! 立ち会い希望だったし夫に電話を……と携帯出したら「そんなことは付き添いのお母さんにしてもらって! 生まれちゃうよ!」と看護師さん。
結局15時に病院入って、普通の健診の順番待ちして、16時前に分娩台に誘導されて40分には産声でビックリでした。
2人目
つわりが酷くて1カ月早めに仕事を切り上げて里帰りしました。里帰り先の病院で初健診の日に「子宮口が1cm開いてるから安静に」と言われたけど、1カ月も早く実家に帰って来たから負担を少しでもかけたくなくてお風呂と洗濯以外は自分でやっていました。
1週間後、先生から「今日、明日生まれるかもというくらいまで進んでしまっている。頭触れるくらいよ!」と……。まだ9カ月に入ったばかり。それでも親に仕事休んでもらうとか負担をかけたくなくて、夫に子どもを連れて帰ってもらいました。延長保育に毎日コンビニおにぎり生活、夫も大変だったと思いますが……。
子どもが横にいると私の性格上どうしても安静にしていられないので、結果的にはよかったのかな? でも2週間後に胎児心拍が不安定になることが続いて妊娠36週になった瞬間に出すことに……。子宮口は3cm開いていました。早産児でしたが、自力呼吸もできて一緒に退院となったのでよかったです。
3人目
只今妊娠30週ですが、子宮口が既に1cm開いていて安静……。来週進み具合を見て入院かどうか決めるそうです。安静にしたいけど、子どもが2人いて保育園は退園になっていて預け先もなくて日中は子ども2人をみてしまっています……。ウテメリンを飲んでいますが、張るたびにドキドキです。
きゃね さん
1人目:早朝ちょろちょろ破水→午後陣痛促進剤服用→夕方出産。(陣痛~出産7時間)
2人目:夜中おしるしと共に陣痛開始。3時間後、出産。
3人目:2日前から前駆陣痛。当日、早朝に陣痛開始。2時間30分後、出産。
……と、3人とも始まりがバラバラ。今回の4人目は、どうなるんだろう。
6U さん
その他の体験談