【医師監修】母乳育児の準備について

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師天神尚子 先生
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長

日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

【医師監修】母乳育児の準備について

 

母乳は赤ちゃんにとって理想的な栄養源です。成長するために欠かせない栄養素をバランスよく含むうえ、消化吸収も抜群です。赤ちゃんを病気から守る免疫抗体もたくさん含まれています。

よく「胸が小さいから母乳が出るかどうか心配」という人がいますが、乳房の大きさは母乳の出方とほとんど関係ありません。それよりも重要なのは、乳頭が赤ちゃんにとって吸いやすいかどうかということです。特に乳頭が陥没していたり、扁平だったり小さかったりする人は妊娠中から乳首のケアを習慣にして、赤ちゃんが吸いやすいよう準備をしておきましょう。

 

 

妊娠中期に入ったら乳首のケアを始めても

赤ちゃんがおっぱいに吸いつく力はかなり強いので、乳首が硬かったり乳首の皮膚が弱かったりすると、乳頭が切れてしまうことがあります。やわらかく丈夫な乳頭にするために、乳頭とその周囲の皮膚のお手入れは、乳頭の形に心配がない人でも、普段からケアをしておくことが大切です。

乳首のケアを始める場合、妊娠中期に入ってからにしましょう。ただし、乳首を刺激すると子宮が収縮することがあるので、人によってはケアを避けたほうがいい場合もあります。

 

また、乳頭や乳房のマッサージについては流派にもよるようです。妊娠9カ月になったら乳房のマッサージをして乳汁が出ることを確認するところもあれば、妊娠中は積極的なマッサージはおなかの張りにつながるので、産後に乳房のトラブルが出たときに積極的にすればよいとの考えから、それまでは特に何もする必要はないとしているところもあります。必ずかかりつけの医師や助産師に相談してから始めましょう。

 

おなかの張りを感じたときはすぐにケアを中止してください。また、妊娠32週から妊娠36週は、早産防止のためにいったんケアを中止すると安心です。

なお、乳頭ケアは皮膚がやわらかくなるお風呂あがりなどに爪を切った清潔な手で、次の手順でおこないましょう。

 

  • 乳頭を指ではさんで痛くない程度に4〜5回引っ張る
  • 乳頭部を軽くつまんでまわすようにマッサージ

 

陥没乳頭や扁平・小乳頭の場合は、1日4〜5回ずつ念入りにおこなうといいでしょう。乳頭吸引器など扁平乳頭や陥没乳頭を矯正するグッズもありますので、医師や助産師に相談してみましょう。

乳頭ケアで思ったように形がよくならなくても、乳首は赤ちゃんに吸ってもらっているうちにだんだん吸いやすい形に変わってきます。

 

 

ブラジャーはゆるめのものを

ぴったりサイズのブラジャーは乳房の血行を妨げ、乳腺が発達しにくくなります。妊娠5カ月くらいになったら乳房をやさしくガードするゆったりサイズのブラジャーに替えましょう。また、乳頭がブラジャーに擦れたり押しつぶされたりしないよう保護する乳頭保護パッドも市販されています。乳頭が痛いときなどに利用してみましょう。

 

 

おいしい母乳をつくるために

おっぱいの原料となるのはお母さんが食べた食品の栄養素です。おいしい母乳を作るのは、バランスのとれた食事が基本です。授乳期はもちろん妊娠中から食事の内容に気をつけるようにしましょう。

母乳のために何か特別な食生活が必要ということはありません。カロリーの摂りすぎに注意し、脂っこいものや甘いものを控える、良質のたんぱく質や野菜を十分摂るという妊娠中の食事の基本に気をつけていれば大丈夫です。あえて付け加えるとすれば、母乳にはビタミンKが不足しているという欠点があります。病院でもビタミンKのシロップを赤ちゃんに飲ませますが、お母さんの食事からも補給しておけばいっそう安心です。緑黄色野菜や納豆など、ビタミンKを含む食品を積極的に摂るようにしましょう。

日常生活のなかで体を自然に動かすことも、乳房の血行をよくしてスムーズな授乳へとつながります。家事をするときに肩や腕を意識して大きく動かすようにするだけでも効果があります。妊娠37週を過ぎたら軽く乳房をマッサージするのもいいでしょう。乳房の付け根に両手を添えて、力は入れずリラックスしてそのままゆっくりとやさしく乳頭方向へ持ち上げます。マッサージの仕方を指導してくれる病院もありますので、医師や助産師に相談してみましょう。

 

 

母乳育児の準備についての体験談

もともとバストが小さかったので、母乳もあまり出ないかもしれないって心配していたのですが、妊娠中期以降、自分でもびっくりするくらい大きくなりました。授乳には何の問題もありませんでした。今は離乳食が始まり、母乳を飲む量が減ってきたせいか、また少しずつ小さくなってきているのがちょっと残念……。同じくらい胸のない友だちは私ほど大きくはなりませんでしたが、彼女も母乳は順調でした。胸の大きさで心配する必要は全然ないと思いますよ。

妊娠12週目に切迫流産で出血したので、お医者さんから乳首マッサージはしないようにと言われました。そのせいかどうかはわかりませんが、乳首が固く乾燥した感じにはなりました。でも、心配することもなかったみたいです。無事に生まれて順調に授乳しています。

「母乳で育てたい」という人なら、母乳育児に力を入れている産院を選ぶといいかもしれません。私が出産した病院がそうでした。病院の母親学級でもおっぱいマッサージの指導があり、入院中は助産師さんが毎日マッサージをしてくれました。母乳育児に対する不安感がなくなるという点で、よかったなと思います。

(監修/天神尚子先生)

 

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